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第37回 〜教育に悪いアニメとは?〜

自主規制の話題は、しばらく止めようと思っていたのだが、思いついた時に書かないと絶対に忘れるので、またまた、そういう話題であります。

 血はNG……その理由は?

 最近のテレビアニメ……特に子供向けを見るとすぐにわかるが、戦闘ものでも、敵に攻撃を受けても、吹き飛んだり、顔や身体がホコリなどで汚れたり(本当は傷なのだろうが、私にはホコリにしか見えない)するだけで、ほとんど血は流さない
 格闘シーンや剣で切り結ぶシーンが、まるで光線技の応酬のような演出なのは、こういった理由である。この問題に関しては、あの手この手を使って、血を見せないように、残酷にならないように、とスタッフ一同、本当に苦労している。
 すでにお気づきの方も多いと思うが、TVメディア全体の傾向として、画面に血を出すことを、極力避けるようになっているのである。
 まあ、あまり血や内臓がドバドバと出るのもどうかとは思うが、エッチな想像をして、鼻血を出すというベタなギャグでさえ許されないこともあるのだ(笑)
 こうなってくると、笑うしかない。
 血を見せないということだけに目的のみがあって、血を見せてはならない理由など存在してはいないのではないか? とさえ思うくらいだ。

 流血って、そんなに危ない表現?

 血液は、命に関わる重要な存在であり、本能的に死を感じさせる。ある意味、ショッキングな存在ではあるが、忌むべきモノでものでは決してない。

 私たちが子供の頃は、アニメもコミックも、それはそれは殺伐とした者が多かった。
 毎回、血が1ガロンくらい流れているのではないか? というマンガが、私も周囲の友人も特に好きであった。
 私など、永井豪作品が醸し出すカタルシスのひとつに、出血の美学があると思っているくらいだ。
 この美学に関して語ると長くなってしまうので、また別の機会に譲るが、とにかく、テレビやコミックでの出血シーンなど、特に珍しいことでもなんでもなかったのである。
 遊んでいて怪我をして出血しても、血を流しながらも頑張るヒーローと自分とを重ね合わせることで、逆に勇気がわいてきた、という経験を持つ人も多いのではないだろうか? 少なくとも私はそうであった。

 出血がそんなに特殊なことか?

 アニメに限らず、コミックなどでもそうだが、そもそも登場キャラクターの出血というのは、かなり記号に近い。
 出血は、大怪我をしたとか、瀕死の状態であるとか、そういうことを現す記号であって、そういう表現を観たからといって、いちいちショックを受ける子供が、この世にそんなに多いとは思えない。
 逆に、そういうシーンを全く見ずに育った子供のほうが、かえって危険だとさえ思っている。
 傷ついたら怪我をして出血する。
 これは、日常的なことであり、命に関わる問題であろう。
 本来、人が怪我をしたら血を流す、ということは、最も早いうちから教えなければならないのではないだろうか?
 なにしろ現実世界では、ちょっとしたことでも出血するのである。
 例えば道で転ぶなど、なにかの弾みで小さな怪我をした時、血の出ない作品しか触れていなかった今の子供が、初めて自分の身体から血を流した衝撃はいかばかりのものか?
 このほうが、よほどキツイと思うのだ。また、血を異常に恐れる子供が増えているというデータもある。

 隠蔽することで増す危険性

 その逆の危険性も指摘したい。
 血はをイメージするものであることはいうまでもないが、これを隠してしまうのは危険だと思うのだ。

 アニメやコミック、ゲームの多くの作品にとって、戦闘シーンが重要なファクターであることは明らかだ。これらの戦闘シーンにおいて、戦うキャラクターが、一切出血せずに戦う、というのは、それを受け入れる子供達のことを考えると、かなり問題だ。
 暴力に対して死をイメージしない者は、暴力を振るう時に、まず手加減はしない。暴力を振るう際に無意識に手加減をするという行為は、そもそも相手を死なさないためなのだから。
 自分の暴力行為によって、相手が命を失うということなど、最初から考えもせず、気がついたら相手を殺してしまった……などという事件は、枚挙にいとまがない昨今である。
 死を喜ぶのは異常者であるが、相手を殺す意図があったわけではなく、結果的に相手を殺してしまう若い犯罪者の多くは、明らかにこうした想像力の欠如からである。

確かに、メディアに影響されて犯罪に及ぶ者も多い。
 だが、なぜ同じメディアに触れた多くの人々は、犯罪など起こさないのに、その人物は犯罪に及んだのか? 本当に重要なのはこの一点である。
 前にも書いたが、これは社会の問題ではなく、個人の問題である。
 少数の異常者を恐れるあまり、規制の方向性を誤ると、多数の異常者を増やしてしまう危険性があるのだ。

 そして、もうひとつ、創作メディアに関して、私が常々考えている危険な傾向がある。
 何よりも危険なのは、その事に対して、誰もが無自覚なことだ。
 この項続きます。


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