日頃あまり反響がなくて、先行き不安だったこのコラムですが、ウチのサイトをこのページにリンクしてから、直接メールをいただく事が多くなりました。
ちゃんと見てくださっている方がいることを知り、少しホッとしてます。
んで、アダルトアニメと普通のアニメの違いに興味がある人が多いようなので、せっかくですから、QA型式で、その辺のお話しでも……
最初に言ってしまえば、製作工程に違いはありません。おしまい……
……あ、話が終わっちゃった。
当たり前だが、実際、作業工程自体は全く違わないのだ。私もそうだが、18禁専門のスタッフがいるわけではなく、一般作をやっている会社やスタッフが、場合によっては名前を変えたりなどして作っているわけだから、当たり前といえば当たり前である。
アダルトアニメは、一般的にポルノだから低予算というイメージがある。確かに、一部そういった作品は存在するのだが、少なくとも自分の参加した仕事では、明らかにTVシリーズ未満の低予算で制作しているという作品はいまのところない。
むしろ、一般作のOVAよりも、お金が掛かっている知られざる大作というのもあるくらいだ。
特に梅津泰臣監督の『A KITE(*注)』
『メゾ・フォルテ』などは、アニメファンなら一見の価値があると思う。ハッキリ言って一般作のOVAをはるかに越えた期間とスケジュールが投入されているからだ。なんで18禁ものでこんな大作を?? と思うかも知れないが、担当の制作さんが言うには、最初からそんな予算を掛けてたわけではなく、結果的にそうなってしまったらしい(笑)
梅津監督の一連作品は、これは文化事業と制作さんが開き直ってるくらい特別な例だが、アニメの場合、特にアダルトだから低予算というわけではないのである。
これには理由がある。最近のOAVは、18禁アニメのほうが確実に本数が出るという事情があるからだ。実際、原作付きはともかく、完全オリジナルのビデオ作品は、売り上げが芳しくないらしいという話は良く耳にする。
また、アダルト作品は、海外でのセールス面も無視出来ない。
数年前、大作の劇場用アニメで、ジャパニメーション云々といったキャッチフレーズと共に、アメリカのビルボード誌何位! などといったうたい文句が流行したことがある。
あまり知られていない、というより、全く報道されないので、知っている人はほとんどいないのであるが、実は日本のアダルトアニメは、その前から、しょっちゅうランクインされているのである。それも、日本で大作の宣伝に使っているような瞬間風速的なランクインではない。そもそもアダルトものは息が長いので、結果的な実売が、一般に知られるジャパニメーション大作を軽く超してしまう場合も少なくないのである。
特に日本で『淫獣もの』と呼ばれる、触手が女性に絡む作品は海外でもマニアが多く、特にウケがよいようだ。
余談だが、欧米のマニアは濃い人が多く、どこをどう捜したのか、以前、私のホームページが海外のアダルトアニメサイトにリンクされていて仰天したことがある。
当たり前だが、18禁のアダルトアニメといえば、これがなくては始まらない。ロボットものにおける戦闘シーン以上に重要なのである。というか、だから18歳未満は視聴してはならない、ということになるわけだし。
TVシリーズなどは、複数の脚本家でチームを組む事が多いが、OVAの場合、基本的にひとりで全話書く。そういったことから、アダルトものは自分ひとりで書いているため、いまだかつて、他のライターさんの書いたアダルトアニメの脚本、というのを私は見たことがないのだ。だから一般的にどうなのか、さっぱりわからない。
聞いた話によれば、
「そしてふたりの愛は高まっていき、やがて身体を重ね合わせるのだった……」
とだけ書いてあって、あとは絵コンテにお任せという場合もあるらしく、その辺は人それぞれのようだ。
自分に限って言えば、元々18禁のゲームシナリオを書いていたため、そういうシーンは、特にきちんと書くものだと思っていたから、その習慣からそうしているだけに過ぎない。ゲームの場合は、書いたものがそのまま表示されるから、極力具体的に書かなければならないからだ。
ゲームのことはともかく、やはりそういったシーンこそ、脚本家がきちんと書いておく必要があると思う。
いくらエッチシーンとはいえ、ストーリーに無関係で存在するわけにもいかないし、登場人物のキャラクター性もちゃんと出さなくてはならない。
なんらかの意図があるのならともかく、エッチをはじめると、いきなり別人になってしまうのはおかしいし、せっかく作ったキャラクターなのに、それを生かさなくてはもったいないと思う。そういった意味もあって、脚本中にもちゃんと脚本家が書いておく理由があると自分的には思っている。
レンタルで借りる人の場合、エッチシーン以外は飛ばし見する人も多いので、そんなこだわりは必要ない、とする人もいるが、エッチシーンだけ見ているとしても、その中で、ちゃんとキャラクター性やドラマ性を表現しないと、楽しんでもらえないのではないのだろうか? まあ、飛ばし見前提で脚本を書くわけにもいかないが。
18禁もので難しいのは、実はこの辺でもある。ストーリーがきちんとしていて、エッチシーンのあるアニメ作品というものを希望するユーザーと、ストーリーなんかどうでもいいからエッチシーンだけにしてくれ、という実写AVのアニメ版を希望するユーザーにハッキリ二分されているからだ。
私が脚本を書くのは前者のほうに限られている。後者のような作品を否定しているのではなく、延々エッチシーンが続くだけであれば、脚本を書く理由がなく、当然必要がないので依頼も来ない、というだけである。
また、制作会社も後者のような作品は作ることがあまりない、と思われる。その理由は、後者のような作品は、実写AVの顧客と同様、レンタルユーザーが中心であるためだ。
正直、実写のAVがレンタルメインで商売が成り立つのは、低予算で作品を連発出来るというメリットがあるからであり、アニメはよほどの低予算で作っても、予算をかなり掛けた実写AVより予算が掛かってしまうのだ。
そのため、対象ユーザーは、あくまで購入してくれるお客であり、レンタルは極端に言えば、余録に近い考えがあるようだ。
まだ質問が残ってるので、次回も続きます。
※注
『A KITE』は18禁の通常版の他に、海外版を再編集した15禁バージョンもある。機会があったら是非ご覧になって下さい。
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