前回のホン読みの話を、もう少し細かく解説してみる。
前回、ホン読みの流れをざっと書いたが、ホン読みは脚本だけではなく、プロットを検討する場でもある。プロットというのは、簡単に言えば大まかなあらすじのことで、ホン読みの最初の作業は、プロット検討から始まる。
最初からいきなり本番の脚本を書いてしまうと、読む方も大変だし、話の根幹に関わるような大幅な修正があったとき、直すほうも大変だからだ。
例えば、海水浴の話でプロットを書いてきても、オンエアが冬だからスキーの話にしてくれ、と言われた場合、頭からすべて書き直しになってしまうが、脚本を頭から書き直すのは量的な意味でも大変である。だから、最初は大まかな筋だけで検討する必要があるのだ。
逆に言えば、プロットの段階で、どんな話にするかは決め込んでおかなければならない。
まあ、プロットでOKになったのに、いざ脚本にしたあとで、やっぱ全然違うお話しにして欲しい、というキツイ局面もたま〜にある。が、そんな場合でも、一応文句を言いつつも、最終的にはにこやかに直せないと、私のような名前も実力も不足しているライターは、プロとしてはなかなかやっていけない。きついけど(笑)
スケジュールの限られているテレビシリーズなどは、脚本のリテイク分と同時に、次の話数のプロットも提出するのが普通だ。ビデオ2・3巻程度のビデオシリーズの場合は、全話分まとめてプロットを作り、全体的な流れを把握することを要求されることも多い。
特にミステリーや、謎ときがメインになる話は、プロットの段階できちんと構成しておかないと、話の整合性が取れなくなってしまうので、プロットの時点でかなり厳密に作り込んでおく必要があるが、作品の種類によっては、プロットを脚本化する際にストーリーがどんどん変わっていってしまう場合もある。
特に恋愛ものやコメディものは、キャラが勝手に動いてしまう事が多いので、脚本を書き上げたあと、アレレ? いつの間にかこんな話に……と、書いた本人が驚くこともよくある(笑) ひどいときにはオチが全く逆になってしまう場合すらあった。
ホン読みで話しておかなければならないこと大事な事柄がもう一つある。それはシリーズ構成という役目だ。
たいてい、アニメのオープニングのクレジットには『シリーズ構成○○○』と表示されているはずである。このシリーズ構成という肩書き、名前は知っていても実際なにをする人なのか知らない人も多いと思う。
シリーズ構成の一番大切な仕事は、シリーズ全話を通して、全体の大まかな流れを作ることだ。
この流れをスタッフに確認して貰うため、シリーズ構成は構成表という資料を作成する。
構成表とは、第1話はこんな話、第2話はこんな話、という風に、各話の簡単な内容を表にした指示書だ。
構成表の書き方は、担当した人や作品によってさまざま。ほとんどあらすじ? というくらいストーリーを書き込む人もいれば、「××というキャラが中心の話」としか書かれていないこともある。
シリーズ全体が大河ドラマ的な話なら前者、一話完結ものなら後者のような指示になる事が多い。
基本的には一話完結でも、ストーリー上の大きなポイントになるような話ならば、ある程度まで指示を書き込むし、大河ドラマ的な作品でも、大筋とはあまり関係のないちょっとしたサイドエピソードの場合は、ライターにおまかせ的なラフな指示を出す場合もある。
また、コミック原作もので、原作に沿ってアニメ化する場合は、「原作○Pから○Pまで」のように、原作のページ数の指定も付ける。
まれに、作家性の強い監督だと、この構成表を監督自らが作る場合もあるが、その際でもシリーズ構成という役職は必要だ。
特に1本のシリーズに複数の脚本家が参加している場合、それを束ねる人が必要だからだ。
シリーズ構成の担当者は、あがってきた全ての脚本に目を通し、脚本部分の細部(基本設定や台詞の言い回しなど)のチェックを行わなければならない。場合によっては、他の脚本家の書いた脚本に、自ら手を入れることもある。
このように、シリーズ構成担当者は脚本部門の総責任者だと言える。
よって、複数の脚本家が参加している場合、シリーズのメインライターが兼務するのが普通である。
このシリーズ構成を、時々脚本家ではない人が担当することがあるらしい。それはそれで凄いと思うが。
シリーズ構成という仕事は、脚本家と他のスタッフ、もしくは脚本家同士のトラブルなどの処理まで面倒みなければならず、かなり神経のいる仕事でもある。
だから例外なくシリーズ構成を担当している方は、割の合わない仕事、だと私にぼやく。それは単に、私が、そういうトラブルのあった現場に呼ばれる事が、非常に多いからかも知れないが……(笑)
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