綴りが違うんですけど……
倫理云々の話は、こないだでおしまいの予定だったんだが、身近に面白いことがあったのでちょっとそのお話しを。
私がシナリオを担当した『luvwave』という18禁ゲームを原作とした、オリジナルビデオアニメ(OVA)がある。全3巻で、現在2巻までリリース中。
…宣伝はさておき、その3巻目が倫理協会に引っかかったそうだ。なにが引っかかったのかと思ったら、サブタイトルのネクロス。死体愛好症のネクロフィリア(necrophilia)を思わせるからだそうである。
ネクロスは、コンピュータ用語のnucleusから取ったもので全然関係ない。発音通りのヌクリスだとイマイチなんで、あえてネクロスにしといたんだけど、そんなことから足が着いて…じゃない、チェックが入るとは夢にも思わなかった。
で、制作さんから、そんなわけでサブタイトルを変えていいですか? と連絡が入ったのだった。まあ、作品によっては、放送されて初めてサブタイトルが変更されたことを知る場合もあるので、変更はおまかせします、と言っておいた。
(追記:色々あった末、結局「ネクロス」のまま発売された)
断り書きを見て、思わず涙……
サブタイトルが引っかかるというのは特殊な例だと思うのだが、18禁ものは、この倫理チェック絡みでなんとも微妙な表現が必要になることも多い。
例えば近親相姦は絶対にダメなので、必ずお兄ちゃんと妹、みたいな関係の場合、当然義兄弟という設定になる。
そこまではいいとして、最近では
「この作品に出てくる○○と○○は血縁関係ではありません」
という断り書きまで画面に表示する始末。端から見たら笑えるだろうが、我々としては死活問題なので必死なのだ。
最近、アニメ・ゲームの18禁もので、一見するとレイプ風だが、実はそうでなく、お互いが望んだ形で、そのような状況にあるという不可思議な描写が増えている。これは、レイプシーンで女性が快感を得る描写は、レイプ犯罪を助長するという理由でNGだから。和姦なら良い? ので、工夫しているわけだ。
これと似たようなことでは、売買春を肯定する表現も望ましくないとされている。だから援助交際をテーマになにか話を作ろうとすると、援交は悪いことを前提に作らなければならず、昔の邦画みたいに、すごくネガティブな話になってしまうだろう。
あと、出産に絡むことや、獣姦はダメ。出産はともかく、獣姦がダメなのは不思議だ。どうにも理解できないが、決まり事は決まり事だし、だいいち獣姦シーンなんて、あまり書きたくないから自分的には別に構わないけど。
ただし、実在の獣はダメでも、触手ならOKだ。触手なら、女性キャラが感じても大丈夫である。 最近、触手系が少ないので、この辺で頑張ってもらいたいものだ。日本よりむしろアメリカで、テンタクル系と呼ばれて喜ばれているようである。触手は、かの北斎漫画から連なる日本の文化である。みんなで大事に育てていこうではないか!!
厳しくなっている規制事情の割に、タイトル数は増加傾向に
あれ? なんの話してたっけ? そうそうアダルトアニメの規制の話だった。
当然だが、ドラッグ関係や残酷描写も色々と規制がある。
手足が千切れたりするのは、あまり望ましくないので、部分的描写にとどめる必要がある。この辺は、脚本よりも絵コンテや演出さんに工夫してもらうしかない。
いま、一番困ってるのは、18禁と銘打った場合、高校生以下の婦女子は、登場させることすら難しくなっているらしいということだ。例え、Hなシーンがなくても、裸でなくても、子供を出すのはNGになるらしい。この辺は自分で確認したことではないが、作品中に子供を出すのは止めて欲しいと、実際に言われることも多いので、検閲に引っかかるかどうかは別にしても、自主規制としては考慮しなければならないようである。一般作だと、裸くらいは問題ないのだが……
このように一般作だと問題ないことが、アダルトものとして商品化するとダメになる、という逆転現象もあって、アダルトものなら、なにやってもOKというわけではないのだ。
しかし、一部のタイトルを除いて、オリジナルアニメやPCゲームの場合、一般作だと数字を稼げない(つまり売れない)という深刻な現状があるため、オリジナルで冒険したければ、18禁で、という流れがあるのだ。
よって、時には18禁で一般作を凌ぐような傑作が生まれる場合もよくある(特に低予算のPCゲーム)のだが、ただの売らんかな主義で粗製濫造するメーカーも多い。不景気なので、新規参入組も多く、この傾向はしばらく続くだろう。
以前にも言ったが、私個人は規制というものは時には必要、という考えなので、腹が立つことはあまりないのだ。でもやっぱ、なんで? という場合もたまにあるのも正直なところだ。
おそらく、担当の人があまりに真面目に考えすぎて、規制の意味や意義よりも、規制のための規制という、いわばあさっての方向に仕事が向いちゃっているのでは? と首を傾げることもしばしばなのが正直なところなのであった。