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第13回  〜へたな規制が、危ないヤツを増やす〜

人間だって動物なのだ

 前回からの続きです。
 エッチなものや、暴力的なものを子供達の目から完全に見えなくしようという考えは、理解できる。とてもわかりやすいやり方だ。それで一応安心はできるだろうし……
 でも、単純に見えなくすればそれで良いのか? といえば、実は、なんら根本的な解決にはなっていない。

 そもそも、どうしてそういったものがこの世から消えて無くならないのかと言えば、単純に商売になるからである。エロ業界は不況に強い、といわれるが、実際はそうではなく、不変だから、周りが落ち込むと目立つだけである。なぜ商売になるのかといえば、人がそれを欲しているからだ。
 なぜか? 性衝動や暴力的な衝動は、人間という動物の本能的な部分に根ざすからだ。社会生活を営むに置いて、動物的な部分はおおよそ不要だ。だからこそ、人間が人間であろうとするために、そのような部分をタブー視してしまう。でも、人間だって、結局は動物だし、そもそも性的な衝動は子孫繁栄という生物としての存在意味に関わることで、これを完全に消すわけにはいかないだろう。
 たとえ、そういった描写をこの世から消してしまっても、人間が動物である限り、そのような衝動は必ず発生する

スポーツでは発散できない

 闘争本能を満たす代償行為としてスポーツが存在するという意見もある。しかし、昔プロレスごっこで友達に怪我をさせてしまうという事件が頻繁に起こったときに、プロレスは子供にとって害を及ぼすものである、という論調が世間で言われたこともあり、単純にスポーツの存在のみで、暴力事件が防げるというものでもないだろう。野球やサッカーの応援に熱くなりすぎて暴力沙汰を起こす人もいるのだ。

 まあ、一歩引いて、暴力的な衝動は、ある程度スポーツで代償することは少しは可能かも知れない、としよう。で、性的な衝動はどうか? いまはさすがにあまり聞かないが、私が子供の頃は、そういう気分になったらスポーツで発散して、などというアホなことをいう学者や教育者がいたものだ。
 それは明らかに間違いである。運動で疲れすぎて、その気にならないことはあっても、決して発散などはしない。直接確認はしていないが100%断言できることがある。高校野球の甲子園出場を果たしたレギュラー選手だって、絶対オナニーはしている。これは生理的なものだから仕方ない。女性のそれとは違い、快感を伴ってしまうため誤解してしまうが、男という性にとって必要不可欠な行為なのだ。この辺の考察を経ずして、単純に見せなくすればいい、というやり方はどうか、と私は思ってしまうのだ。前回の健全な青少年は、結婚するまで夢精しろ、といっているに等しい。だが、それは不可能だ。普通、押さえ切れるものではないし、それこそが本来の健全なる男性機能なのだ。

性的衝動の代償行為を教えておくれ

 そう、暴力衝動の代償行為としてスポーツが存在するのならば、性衝動に変わる代償行為はなにか? いまでいうところのアダルトメディアの視聴行為と、その視聴にともなうマスターベーションなのである。実に身も蓋もない言い方なのは承知。しかし、この辺の言及を避けて、ただ規制するのは逆に危険だと思うのだ。
 女性には理解しがたいかも知れないが、男がエロティックなものに反応するのは、当たり前の衝動なので、これを押さえることはできない。仮に規制して、そのようなものが、完全に見えなくなったとしても、衝動は起きる。そのときどうすればよいのか? 規制をしようとする人達からは、なんの答えも出されていない。このほうがよっぽど危険だと思える。
 本当に大切なのは、ここなのだ。規制したい人達は、
「自分が若い頃、オナニーのネタにはこういうものを使っていました、だからいまの自分があるのです」
 と、きちんと話してもらいたい。その上で、だから、ここまでの描写は不必要だ、と判断して欲しい。

 規制すること自体に全面的に反対をするわけではない。例えば交通違反の違反者を全て摘発することなぞ不可能だ。しかし、見せしめにに摘発することで、みんなが気を付けるようになるという効果がある。誰だってキップを切られたくないからね。 警察だって、違反者がこの世から無くなるなんて事は考えてないだろう。いくら、締め付けを厳しくしようと、スピード違反や駐車禁止といった交通違反は絶対無くならない。スピード違反や駐車違反を全くしないで、自動車を運転するのは不可能と言ってよいからだ。警察は、それを承知の上で、取り締まりをする。これは抑止効果があるからだ。
 だから、問題は規制のしかたなのだ。単に乳首が見えたらダメとか、性器描写がダメ、とか血がたくさん出るのはダメ、とか、そのような機械的な判断で規制されてもこっちがたまらんと、言いたいわけだ。だって、いままで述べてきたように、人間に動物である部分がある以上、それは必要なのだから。必要である、ということを認識したうえで規制するというものを考えて欲しいと言っているのである。
 重たくて下品な話で恐縮ですが、あと一回続きます。

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